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チャレンジ蒸留:複数口座をバラバラの波で走らせ、生き残りだけを次に進める|期待値は同じまま、勝てる確率が13%→81%になった

公開日: 2026/9/17更新日: 2026/9/27

※ 本記事は考察(オピニオン)です。投資助言ではありません。シミュレーションはモデルによる試算であり、将来の成績を保証しません。ファーム固有のルールは頻繁に更新されるため、必ず各社公式サイトでご確認ください。(検証日: 2026年9月17日)

2026年5月まで、私は全口座に同じ売買をミラーしていました。10口座あれば10口座が同じタイミングで同じ方向に動く。今はまったく違うやり方をしています。

チャレンジ蒸留とは

先に、持ち帰ってほしい形を書きます。

  1. 複数のチャレンジを同時に買い、1口座ごとに違う戦略を割り当てる(同じ売買をコピーしない)
  2. 生き残った口座だけを次に進める
  3. その生き残りグループでも、また別々の戦略で同じことを繰り返す
Code
0000000000
00000
00
0

これだけです。私はこれを「チャレンジの蒸留」と呼んでいます。

そして焚き火のように回します。 爆破したら即座に補填して回転を止めない。利益はさらなるチャレンジの購入と、さらなる波の分散に回す。火を絶やさないことが運用そのものです。

最初は自分でも「サバイバーシップ・バイアスを製造しているだけでは」と疑いました。生き残ったものを見て「強かった」と言うのは、統計のいちばん典型的な間違い方だからです。

そこで 40,000本のモンテカルロで検証しました。結論から言うと、半分は疑ったとおりで、半分は違いました。

5月と今で、本当は何が変わったのか

口座数は変わっていません。変わったのは賭けの本数です。

全口座ミラーは、10口座あっても賭けは1本です。同じ売買をコピーしているので相関は1。10口座が同時に勝ち、同時に負ける。これは「1つの賭けに10倍のチップを積む」のと数学的に同じで、分散していません。むしろ集中しています。

蒸留は、10口座が別々の戦略で走るので賭けが10本になります。相関がほぼ0。片方が死んでも片方は生きている。

同じ「10口座」でも、片方は1本勝負、片方は10本勝負。違いはここだけです。 そしてこの違いが結果を支配します。

相関合計の標準偏差1口座あたりの相対リスク
全口座ミラー1N × σ1(減らない)
蒸留(独立)0√N × σ1/√N

20口座なら、蒸留の相対リスクは単独口座の22% まで落ちます。ミラーは何本並べても100%のままです。

大事なのは本数ではなく「波のバラつき」

ここが一番の急所です。本数を増やしても、口座同士の相関が高いままなら、ほとんど何も起きません。

N口座の相対リスク(単独口座を1.0とする)は、口座同士の相関 ρ でこう決まります。

Code
相対リスク = √( (1 + (N−1)ρ) / N )
相関 ρN=5N=10N=20N=100N→∞の下限
0.00.4470.3160.2240.1000
0.20.6000.5290.4900.4560.447
0.50.7750.7420.7250.7110.707
0.80.9170.9060.9000.8960.894
1.0(全ミラー)1.0001.0001.0001.0001.000

下限は √ρ です。 相関0.8の口座を何百本並べても、リスクは 0.894より下がりません。 20本で0.900。ほぼ無意味です。

対して相関0なら20本で0.224まで落ちます。効いているのは本数ではなく相関のほう。 だから「すべての口座でバラバラの波」が生命線になります。

これは机上の式ではありません。 実際の価格データで5戦略×8銘柄=40本の戦略を作って測ったところ、戦略どうしの平均相関は0.007(実質ゼロ)でした。中身は最大0.88(同じ戦略をS&P500とダウでやれば当然そっくり)から最小−0.74(同じ銘柄で順張りと逆張り)まで幅広く、平均するとほぼ消えます。検証の全文は分散は本当にフリーランチかにまとめました。

波を分ける方法はいくらでもある

「別々の戦略を10個も持っていない」——これが最初の壁だと思います。でも必要なのは10個の戦略ではなく、10個の違う波です。

相関を下げる効き目の順に並べます。

手段想定される相関コメント
別銘柄にする低最も素直。ただし相関の高い銘柄同士(金と銀、NASDAQとS&P)は効果が薄い
曜日で分ける低月曜だけ/火曜だけ。取引する日が違えば別の抽選になる
時間帯で分ける低〜中東京・ロンドン・NY で分ける
エントリー時刻をずらす中同じ日でも建値が変わる
SL/TP を変える中〜高同方向に入るので相関は残るが、決済位置が変われば結果は変わる
ロットだけ変える1.0これは分散ではありません。 単なるスケール変更

SL/TPを少し変えるだけでも波は変わります。 同じタイミングで同じ方向に入っても、片方はTPに届き、片方は同じヒゲで狩られる。結果が変われば相関は1を割ります。

ただし手段によって効き目がまったく違います。 SL/TPだけをいじって相関0.8にとどまるなら、20本並べてもリスクは0.900。本数を増やす前に、波が本当にバラけているかを先に確認してください。 曜日分割は「コストがほぼゼロで相関が低い」点で優秀なだけで、唯一の方法ではありません。

注意:方向で分けるのはやめたほうがいい

「口座Aはロング専用、口座Bはショート専用」は一見きれいな分散ですが、同じ銘柄・同じ時間帯でやると、後述する口座間ヘッジと外形が区別できなくなります。 避けてください。

曜日で割っても通過確率は下がらない

「取引回数が5分の1になるなら通りにくくなるのでは」と思うかもしれません。期限のないプランなら、通過確率は変わりません。

目標に届くのが先か、DDに当たるのが先か——これはギャンブラーの破産問題で、答えは1回あたりの賭けの分布と2本の壁だけで決まります。賭けるペースは結果に影響しません。 週5日で3か月かかるものが、週1日なら15か月かかる。変わるのは時間だけです。

なお30日間取引がないと口座が失効する規約を持つファームがあります。曜日で割るぶんには月4回は動くので問題ありませんが、それ以上細かく割るときは確認してください。

前提:1口座あたりで勝てていないと話にならない

蒸留を語る前に確認すべきことがあります。1口座あたりの期待値が正か。 負の期待値を10本並べたら、10倍速く負けるだけです。

2フェーズ $100K を、勝率50%・RR1.0=完全なエッジゼロで40,000本ずつ回しました。1日3トレード、1トレード1%リスク、120営業日。

プラン参加費参加費率ファンド到達期待受取倍率
FundedNext Stellar Lite$3990.399%12.9%$1,3873.48倍
FundedNext Stellar 2-Step$5490.549%18.3%$1,6282.97倍
Fintokei サファイヤ$5290.529%17.3%$1,4912.82倍
FTMO 2-Step$5400.540%16.9%$1,3812.56倍

エッジがゼロでも、全プラン倍率が1.0を超えました。

理由はチャレンジがコールオプションだからです。負けても失うのは参加費だけ、勝てばファンド口座で上は青天井。この非対称性が、勝率50%・RR1.0という「何の優位性もない人」にも正の期待値を残します。

倍率が1.0を超えていること。これが蒸留の唯一の前提です。ここが崩れたら、以降の話は全部無意味になります。

本題:蒸留は何を生んでいるのか

同じ条件で、口座数だけを変えました。プランは Fintokei サファイヤ($529)。

口座数総参加費1本以上ファンド期待手取り手取りプラス確率
1$52916.8%+$94213.0%
5$2,64561.4%+$4,81547.8%
10$5,29085.0%+$9,73065.4%
20$10,58097.9%+$19,32281.1%

期待手取りは完全に線形でした。 1本あたり $942 / $963 / $973 / $966。誤差の範囲で同じ。蒸留は期待値を1円も生んでいません。 疑ったとおりです。

違ったのは右端の列でした。プラスで終わる確率が 13.0% から 81.1% へ跳ねています。

ここが決定的です。エッジゼロ・1口座の期待値は +$942 ですが、実際にプラスで終わるのは13.0%だけ。残り9割近くは $529 を捨てる。期待値は正なのに、ほぼ毎回負ける宝くじです。

そして宝くじ型の期待値は、何度も引けない人にとっては存在しないのと同じです。1回しか引けないなら、9割の確率で「理論上は勝っていたはずの負け」で終わる。

20本並べると、1本あたりの期待値は変わらないまま、5回に4回はプラスで終わる事業になります。

蒸留はエッジを作る装置ではありません。すでにある正の期待値を、実際に回収できる形に変換する装置です。

エッジがあるなら、話はもっと単純になる

勝率55%・RR1.2を入れるとこうなります。

口座数1本以上ファンド手取りプラス確率
192.6%92.5%
5100.0%100.0%
10100.0%100.0%

5本で40,000本中1本も負けませんでした。 蒸留はエッジを作らない代わりに、エッジを持っている人の不確実性をほぼ消します。 逆に言えば、エッジがない人がやっても「9.4%が76.5%になる」までで、無から有は生まれません。

実データで裏を取った

ここまではコイン投げ(人工的な乱数)での検証です。本物の相場でも同じことが起きるのか、2010年7月から2026年9月の実価格で確かめました。

5つの定番戦略(移動平均クロス / ボリンジャー逆張り / ドンチャンブレイク / RSI逆張り / モメンタム)を8銘柄(金・ナスダック・S&P500・ダウ・原油・ドル円・ユーロドル・銀)に当て、40本の波を作ります。40本のうち25本がプラス・15本がマイナスという、ちょうど現実的な顔ぶれになりました。

そのまま2フェーズのチャレンジに乗せて、実際のカレンダー上の開始日をランダムに選んで4,000回走らせています。波どうしの本当の相関も、値動きのクセも、そのまま入ります。

同じ波を並べても、確率は1ミリも動かない

口座数総参加費全滅率1本以上ファンド到達プラス率
1口座$50058.4%23.8%14.6%
5口座$2,50058.4%23.8%14.6%
10口座$5,00058.4%23.8%14.6%
20口座$10,00058.4%23.8%14.6%

1桁も動いていません。 同じ波を同じ期間に走らせれば全口座が同じ値動きをするので、20口座に $10,000 払っても買っているのは1口座を20枚コピーしたものです。

「本数ではなく波のバラつき」という主張が、実データでそのまま出ました。

分けた数だけで、全滅率が32分の1になる

そこで口座数を10に固定したまま、別々の波をいくつ使うかだけを変えます。参加費は常に $5,000 です。

別々の波全滅率1本以上到達プラス率期待手取り標準偏差
1本(全部同じ)58.4%23.8%14.6%+$6,141$36,581
2本37.2%38.7%23.8%+$5,471$25,622
3本21.8%51.7%32.4%+$5,661$21,211
5本8.8%70.3%41.9%+$5,983$19,134
10本(全部バラバラ)1.8%89.7%51.4%+$5,544$14,224

期待手取りはほぼ横ばいのまま、全滅率だけが32分の1になりました。 コイン投げのときと同じ結論です——蒸留は期待値を生まず、回収できる形に変換している。

そして2本に分けるだけで全滅率が21ポイント落ちます。 最初の1〜2本を分けることの価値が圧倒的で、そこから先は効き方が鈍っていきます。10本まで増やす価値はありますが、まず2本です。

新しく分かったこと:「良さそうな波」を集めると分散が壊れる

これは想定していませんでした。直近で成績のいい波を選んで並べると、こうなります。

選ぶ本数無作為に選んだときの相関直近の成績上位を選んだときの相関
5本+0.003+0.209
10本+0.010+0.137
20本+0.007+0.054

成績で選んだ瞬間、相関が20倍から70倍に跳ね上がります。

理由は考えれば当たり前で、直近で成績がいい波は、直近の相場環境に合っていた波だからです。似た環境に反応するもの同士は似た動きをします。「金が強かった時期」なら金関連が上位を占め、「トレンド相場」ならトレンド系が並ぶ。

成績にもそのまま出ました。20口座での比較です。

選び方全滅率期待手取りプラス率
無作為に20本0.1%+$11,43958.9%
直近の成績上位20本0.5%+$8,15054.0%

無作為に選んだほうが全指標で勝ちました。 上位に入る実力の差より、相関が上がる損のほうが大きかったということです。

良さそうなものを集めると、分散しているつもりで集中しています。 波を選ぶときは「強いもの」ではなく 「似ていないもの」 を基準にしてください。

効くのは2つの軸。混ぜて考えない

ここまでの数字を整理すると、構造の効き目は2つの軸に分解できます。 混ぜると何が効いたのか分からなくなるので、分けます。

Code
期待手取り ≒ 予算 ×(倍率 − 1) ← 倍率 は「参加費率」で決まる
プラス確率 は 本数 で決まる ← 本数 は「予算 ÷ 参加費の絶対額」
  • 倍率(=期待受取÷参加費)を決めるのは、参加費が口座サイズの何%か。絶対額ではありません
  • プラス確率を決めるのは本数。こちらは絶対額で決まります

この2つは別々に動くし、逆を向くこともあります。 実在プランで見ます。予算100万円、腕は全ケース同じ(勝率50%・RR1.0=エッジゼロ)。

プラン参加費率倍率本数期待手取りプラス確率
Fintokei エメラルド(5,000万)0.620%2.41倍3本+1,305,720円31.5%
Fintokei ルビー(1,000万)0.698%2.14倍14本+1,100,392円66.2%
Fintokei サファイヤ(2,000万)0.549%2.72倍9本+1,674,888円60.9%
FTMO 2-Step($100K)0.540%2.56倍12本+1,498,500円66.5%
FundedNext Stellar Lite($100K)0.399%3.48倍16本+2,342,448円76.9%

エメラルドを1本買うと、両方の軸で損をする

Fintokei のエメラルドとサファイヤは、ルールが完全に同じです。 目標8%→6%、最大DD10%、日次5%、分配80%。違うのは口座サイズと値段だけ。

それでも結果はこうなります。

  • 参加費率が悪い。 エメラルド 0.620% に対しサファイヤ 0.549%。同じルールなのに、大きい口座のほうが口座サイズあたりで高い。 これがそのまま倍率の差(2.41倍 対 2.72倍)になります
  • 本数が減る。 100万円でエメラルドは3本しか買えません。サファイヤなら9本

期待値でも確実性でも負けます。+1,305,720円 対 +1,674,888円、31.5% 対 60.9%。「大きい口座を1本」は、この運用では最も筋の悪い買い方です。

逆を向くこともある:ルビーとサファイヤ

一方でルビーを見ると、2つの軸が逆方向に動いています。

ルビーは参加費率が0.698%と最も悪く、倍率は2.14倍とサファイヤに負けます。ところが1本が安いので14本買えて、プラス確率は66.2%とサファイヤの60.9%を上回ります。

期待値を取るならサファイヤ、確実性を取るならルビー。 どちらが正解かは、あなたが「大きく勝ちたい」のか「負けたくない」のかで決まります。2つの軸は独立しているので、片方だけ見て選ぶと間違えます。

割引は2つの軸を同時に動かす唯一の手

参加費が下がると、参加費率が下がって倍率が上がり、同時に絶対額が下がって本数が増えます。 2つの軸が同時に改善する打ち手はこれだけです。だからセールを待つ価値があります。

腕と構造、どちらが効くか

念のため書くと、腕の天井のほうが高いです。同じサファイヤ1本でも、勝率55%・RR1.2にすれば倍率は数十倍になります。エッジの効き目は構造の比ではありません。

それでも構造を先にやるべき理由は3つです。

  • 今日実行できる。 プランを選び、クーポンを入れ、本数を決めるだけ
  • 確実。 「参加費率の低いプランを選ぶ」は必ず効きます。「勝率を5ポイント上げる」は達成できるとは限りません
  • 掛け算になる。 構造は1本あたりの結果に掛かるので、エッジがあるならなお効きます

腕を磨くのをやめろという話ではありません。 ただ、同じ予算・同じ腕でも、プランの選び方だけで期待手取りが +1,100,392円 から +2,342,448円 まで動く。この差はトレードの技術では埋められないし、逆に技術を上げてもこの差はついて回ります。

ファンド口座も蒸留の対象

ここまで読むと「ファンド口座に到達したらゴール」と読めてしまうと思います。違います。蒸留はそこで終わりません。

私はファンド口座も、さっさと出金して爆破します。 期待値はチャレンジ突破にしかないと考えているからです。

なぜ「死守」が間違いなのか

ファンド口座を自己資金と比べると、こうなっています。

  • 利益は 80〜90%しか取れない(自己資金なら100%)
  • DDに当たったら 永久に失う(自己資金なら負けても翌日また張れる)
  • 日次・一貫性・ニュース・ポジション数の制約つき
  • ポジションの所有権がなく、支払いは相手の健全性と善意に依存

下方が限定されている代わりに、上方も削られている。 これはオプションそのものです。そしてオプションの価値は凸性にあり、凸性は「行使する」ことで現金になります。 満期まで握り続けたら、時間が価値を削るだけです。

死守するファンド口座は、ただの劣化した自己資金口座です。制約だけ多くて、取り分が少なくて、一度死んだら戻ってこない。

根拠は3つ

⒈ 期待値が初回出金に集中している。

ファンド口座の価値は「死ぬまでに受け取れる出金の合計」です。これは各サイクルの生存を条件にした等比級数になります。1サイクル目は満タンのバッファで始まるので生存率が最も高く、2サイクル目以降は「1サイクル目を生き延びた」条件付き。後ろにいくほど確率が痩せるので、期待値は前方に偏ります。

⒉ 初回出金でバッファが消えるファームがある。

E8 Markets の E8 Pro は公式ヘルプに明記されています。出金を請求した瞬間に、静的DDのラインが恒久的に初期残高へ移動する。 しかも請求できるのは(残高−初期残高)の50%だけ。つまり2サイクル目以降は構造的に1サイクル目より不利で、規約側が「守り抜くこと」にペナルティを課しています。

⒊ そして本命はカウンターパーティリスク。

これが一番大きい。2026年だけでも、FundedNext は $50K 以上でEAを全面禁止に転じ、ATFunded はサービスを停止し、MyFundedFX(Seacrest)は消滅しました。

バッファは「他人の口座の中にある数字」で、出金済みの現金は「自分のウォレットの中の資産」です。 同じ額面でも別物で、ファームが飛べば前者はゼロになります。さっさと出金するのは期待値の話ではなく、資産の所在を移す話です。

数字で見ると回ります

当サイトで実際に受け取った The5ers の初回出金は $1,230.86。一方、Fintokei サファイヤの参加費は $529。

出金1回で、次のチャレンジ2.3本ぶん。 このループが回る限り、口座を守る動機は薄くなります。これが「焚き火」の燃料です。 爆破した口座は即座に補填し、出金した現金はさらなるチャレンジと、さらなる波の分散に回す。

例外:静的DDでラインが動かないファーム

ひとつだけ注意があります。Breakout Prop のように最大DDが完全に静的で、出金しても一切動かないファームでは話が変わります。

$100K の Classic なら失格ラインは永久に $94,000。$110K まで伸ばして出金せずに置けばバッファは16%、出金して $100K に戻せば6%に縮みます。つまりこの型のファームでは、「出金しない」ことがバッファを買う行為になります。E8 のようにラインが動くファームとは逆です。

それでも私が出金を優先するのは、バッファの価値よりカウンターパーティリスクの回避を重く見ているからです。16%のバッファも、ファームが飛べば0になる。ただしこれは「相手を信用しない」という前提に立った選択であって、期待値の計算から自動的に出てくる結論ではありません。そこは区別しておいてください。

捨てているもの:スケーリング

もうひとつ、この運用が放棄しているものがあります。スケーリングプランです。

The5ers Growth、City Traders Imperium の VIP、Hantec(合格のたびに1つ上のサイズのチャレンジへ進める)、Alpha Capital はいずれも、長期生存で口座サイズが上がっていく設計です。爆破前提の運用は、この道を最初から捨てています。

$100K を回し続ける道と、$400K へ育てる道は別の戦略です。合算上限の小さいファームほど、この放棄のコストは小さい(Breakout は $200K が天井なので、育てる余地がそもそも少ない)ので、選ぶファーム次第では実質ノーコストになります。

私たちはトレーダーではなく戦略家です。 1つの口座を育てることではなく、口座という資産を回転させて現金に変えることが仕事になります。

これは「負けを口座に押し付ける」手口ではない

「負ける口座をあらかじめ決めて押し付けてるんじゃないの?」 とよく聞かれます。

できません。 どの口座が勝つかは事前に分からないからです。念のため書いておくと、私は両建てを一切していません。

ただし「押し付け」が成立する形がひとつだけあり、それが口座間ヘッジです。口座Aでゴールドをロング、口座Bで同じサイズをショート。どちらに動いても必ず片方が勝ち片方が負けるので、予測がいりません。 負けたほうは参加費を捨て、勝ったほうがファンドになる。これが「押し付け」の正体です。

機能はします。Fintokei サファイヤ(フェーズ1目標8%・日次5%・最大DD10%)なら、Aが+8%に届くときBは-8%。Bは日次5%で先に飛びますが最初から捨て駒です。2本ぶんの参加費でファンド口座が1本確実に手に入る。通常購入の到達率は17.3%なので5〜6倍効率が良い。だから全社が名指しで禁止しています。

ファーム規約の文言
Fintokei「Opposite trading / hedging across multiple accounts or traders」
Breakout Prop「Hedging across accounts, including opposing positions on the same or correlated assets」
Apex「all accounts must be traded directionally」
TopstepMES対ES のような代替銘柄での偽装も名指し

検出はクラスタ判定です。同時刻の反対建玉、デバイスID、IP、ミリ秒単位のタイムスタンプ照合、決済手段、VPS、KYCの重複、第三者ベンダー経由のクロスファーム情報。「別の会社なら見えない」は成り立ちません。 罰則は出金申請時に止められて利益没収、口座閉鎖、再登録不可です。

蒸留とヘッジは向きが逆

口座間ヘッジ(禁止)チャレンジ蒸留
各口座の建玉同一銘柄・同時刻・同サイズの反対方向別の波・別タイミング
口座間の相関−1≈0
勝者の決まり方構造的に確定・予測不要確率的・事前に不明
規約明示的に禁止禁止条項なし

自己診断は一行です。「どの口座が勝つか事前に分かるか?」 分かるならヘッジ、分からないなら蒸留。

⚠️ 外形が似てしまうリスク

意図していなくても、監視には同じ形に見えることがあります。 複数口座は普通、同一IP・同一VPS・同一KYC・同一決済手段になり、クラスタ判定の材料が最初から揃っているからです。

対策は4つ。同一ファーム内で同じ銘柄を走らせない/同じ銘柄を持つ口座は方向を揃える/両建て的なロジックは1口座に閉じ込める(口座内のヘッジは禁止されていません)/曜日で割る。最後が一番きれいで、曜日が違えばそもそも同時刻に建玉が並びません。

実際にやるなら

  1. 参加費率(参加費 ÷ 口座サイズ)の低いプランを選ぶ。 倍率1.0超が唯一の前提
  2. 2フェーズで日次4〜5%の帯。 日次3%以下は1トレード1%×3回で3連敗すると機械的に死にます
  3. 大きい口座を1本、は最悪手。 同じ予算なら小さい口座を多数
  4. 1口座に1つの波。絶対にミラーしない
  5. 波の分け方は何でもいい(銘柄・曜日・時間帯・エントリー時刻・SL/TP)。ただし相関が効き目を支配します。ロットだけ変えるのは分散ではありません
  6. ファームを分散する。 規約の天井と外形リスクの両方に効きます
  7. ファンド口座に到達したら、さっさと出金する
  8. 爆破したら即補填。 火を絶やさない
  9. 生き残りを「良い波」と読まない

危ないところ

相関を測らずに本数だけ増やすのが一番の無駄です。 相関0.8なら20本でもリスクは0.900。「バラけているつもり」が最も危ない。

規約側に天井があります。 Fintokei は3%ルールの警告が口座をまたいで累積(10回でサービス終了)、Breakout Prop は同一IPからの複数口座取引が禁止事項。合算上限もあるので本数を1社に寄せるのは不可能です。

モデルは楽観です。 最低取引日数・一貫性ルール・手数料・出金サイクル・ファンド口座がいずれ死ぬことは未実装。信用していいのは「倍率の順位」と「分散が潰れる構造」で、絶対額は幻です。

まとめ

  • ミラーと蒸留は、口座数が同じでも賭けの本数が違う(1本 対 N本)
  • 効くのは本数ではなく相関。相対リスクの下限は √ρ。ρ=0.8 なら何本並べても0.894止まり
  • 波の分け方は何でもいいが手段で相関がまるで違う。ロットだけ変えるのは分散ではない
  • 蒸留は期待値を増やさない。増やすのは「期待値を実際に手にできる確率」で、エッジゼロでも 13.0% → 81.1%
  • もう1つの軸は参加費率。倍率が期待値を、本数が確実性を決める。大きい口座を1本は両軸で損
  • ファンド口座も蒸留の対象。出金したら爆破し、即補填して火を絶やさない
  • 口座間ヘッジとは向きが逆(相関−1 対 相関0)。ただし外形が似るので銘柄とファームは分ける

検証スクリプトは scripts/sim-portfolio-2phase-100k.py に置いてあります。

FAQ

Q. 蒸留すれば勝てるようになりますか?

なりません。 期待値は1口座あたりで決まり、本数を増やしても線形に増えるだけです。検証でも1本あたりの期待手取りは $942 / $963 / $973 / $966 とほぼ一定でした。増えるのは「実際にプラスで終わる確率」だけです。1口座あたりの倍率が1.0を割っていれば、何本並べても負けます。

Q. 何本並べればいいですか?

本数より先に相関を確認してください。 相対リスクの下限は √ρ です。相関0.8の口座なら20本でも100本でもリスクは0.9前後から下がりません。相関が0に近ければ20本で0.224まで落ちます。バラけていない口座を増やすのは、ただの浪費です。相関0なら、エッジゼロで5本47.8%・10本65.4%・20本81.1%(プラスで終わる確率)でした。

Q. 戦略を10個も持っていません。

必要なのは10個の戦略ではなく、10個の違う波です。 銘柄・曜日・時間帯・エントリー時刻・SL/TP、どれで分けても構いません。ただし効き目が違います。 曜日分割は相関が低くコストもほぼゼロなので優秀。SL/TPの変更は相関が残りやすいので、本数を増やしても伸びしろが小さくなります。ロットだけ変えるのは分散ではありません。

Q. 大きい口座を1本買うのはダメですか?

この運用では最も筋の悪い買い方です。 Fintokei のエメラルド(5,000万)とサファイヤ(2,000万)はルールが完全に同じですが、参加費率はエメラルド 0.620%・サファイヤ 0.549% でサファイヤが良く、買える本数も3本対9本。期待値でも確実性でも負けます(+1,305,720円 対 +1,674,888円、31.5% 対 60.9%)。

Q. これは負ける口座をあらかじめ決める手口ですか?

違います。そもそも実行不能です。 どの口座が勝つかは事前に分かりません。「押し付け」が成立するのは口座間ヘッジ(同一銘柄の反対方向を別口座に同時に持つ)だけで、あれは予測がいらない代わりに全社が名指しで禁止しています。自己診断は「どの口座が勝つか事前に分かるか?」の一行です。

Q. 別々の波なら、偶然反対方向になっても大丈夫ですか?

規約上はヘッジの意図がなくても、監視は形で見ます。 同一IP・同一VPS・同一KYCが揃っている複数口座で、同じ銘柄の反対建玉が同時刻に立てば、クラスタ判定の材料になります。Breakout は相関資産まで対象に含めています。ファーム単位で銘柄を分けるか、曜日で割って建玉が並ばないようにするのが安全です。なお同一口座内のヘッジは禁止されていません。

Q. ファンド口座は守らなくていいのですか?

出金を優先して、守りには入りません。 期待値が初回出金に集中していること、E8 Pro のように初回出金でDDラインが初期残高へ恒久的に移動する設計があること、そしてファームが飛べば口座内の残高はゼロになることが理由です。当サイトの実績では出金1回が次のチャレンジ2.3本ぶんでした。ただし Breakout のように出金してもDDラインが動かないファームでは、置いておくことがバッファになるので判断が変わります。

Q. 生き残った波が「良い波」ということですか?

違います。ここが一番危ない誤読です。 エッジゼロの10本でも、85.0%の確率で1本以上が生き残ります。生存は実力の証明ではありません。運用会社が小さいファンドを大量に立ち上げ、負けたものを閉じて生き残りの実績で資金を集める「インキュベーター・ファンド」と同じ構造です。蒸留は資金効率の装置であって、波の選別装置ではありません。

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この記事を書いた人

ホソノP |プロップファーム攻略の人

自分のお金でチャレンジを買い、出金まで記録して検証しています。記録した出金は Fintokei・Fundora・Funded7 で合計 610万円、The5ers で $4,776(2026年9月時点)。半裁量EA「ELDRA」の作者。

プロフィールと出金実績X @hosono_p

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