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コイントスでプロップのフェーズ1は何%通るのか|厳密解で計算したら5割を超えた【考察】

公開日: 2026/8/31

※ 本記事は考察(オピニオン)です。投資助言ではありません。計算はモデル上の理論値であり、実際の成績を保証しません。ファーム固有のルールは頻繁に更新されるため、必ず各社公式サイトでご確認ください。(最終更新: 2026年8月31日)

問い:完全にランダムに売買したら、フェーズ1は何%通るのか

チャートも見ない。指標も見ない。コインを投げて表なら買い、裏なら売り。それだけでプロップファームのフェーズ1は何%通るのか。

これは実は厳密に解ける問題です。プロップのチャレンジは「上に利益目標、下に最大ドローダウンという2枚の壁があり、その間をランダムウォークする」という構造をしていて、これは確率論で200年以上研究されている**ギャンブラーの破産問題(gambler's ruin)**そのものだからです。

結論から書きます。手数料ゼロなら55.6%。FTMOに至ってはちょうど50.0%。 サルがコインを投げてもフェーズ1は半分通ります。

そして手数料を5%取ると43.2%まで落ち、日次ドローダウンが厳しい1ステップ系では8%台まで沈みます。

計算の前提

項目設定
口座サイズ2,000万円
1回の売買20万円(資金の1%)
勝敗50:50 のコイントス
手数料勝ち +19万円 / 負け −20万円(勝ち分から5%)
期限無制限
最大DD初期残高基準の固定(トレーリングではない)
日次DDその日の開始残高から測定

手数料5%は1手あたり期待値**−0.5万円**、つまり賭け金の−2.5%に相当します。スプレッドと手数料を合わせた現実的な水準です。

1. 手数料ゼロなら、暗算で出せる

壁が2枚あるだけのランダムウォークは、公平なコインなら次の式で終わりです。

突破率 = 最大DD ÷(利益目標 + 最大DD)

下の壁までの距離を、上下の壁の間の距離で割るだけ。ロットサイズは一切関係ありません(賭け金を半分にすれば手数も倍になるだけで、確率は変わらない)。

Phase1ルール手数料0%手数料5%低下幅
目標2% / 最大DD6%(Fintokei入門プラン)75.0%65.6%−9.4pt
目標8% / 最大DD10%(2ステップ標準)55.6%43.2%−12.4pt
目標10% / 最大DD10%(FTMO 2ステップ)50.0%36.7%−13.3pt
目標10% / 最大DD6%(1ステップ系)37.5%28.1%−9.4pt

FTMOがぴったり50.0%なのは偶然ではありません。利益目標10%と最大DD10%が対称だから、コイントスなら定義上ちょうど半分になります。

ここで効いているのは**「利益目標より最大DDのほうが遠いかどうか」**という一点だけです。2ステップの標準構成(目標8% / DD10%)は下の壁のほうが遠いので、ランダムでも5割を超えます。

2. 手数料5%が12ポイントを削る

わずか5%の手数料で55.6% → 43.2%。この落ち方は直感より大きいはずです。理由は決着までの手数にあります。

目標8% / 最大DD10%のケースを厳密に解くと、平均92手で決着します。1手あたり期待値−0.5万円なので、支払う手数料の期待値は約46万円。利益目標が160万円ですから、手数料だけで目標の29%を食い潰している計算になります。

勝ち / 負け1手の期待値突破率
+20.0万 / −20.0万(手数料0%)±0万55.6%
+19.5万 / −20.0万(2.5%)−0.25万49.2%
+19.0万 / −20.0万(5%)−0.50万43.2%
+18.0万 / −20.0万(10%)−1.00万30.9%
+16.0万 / −20.0万(20%)−2.00万11.9%

手数料2.5%で早くも5割を割ります。 プロップの壁の内側でランダムウォークするというのは、それくらい薄氷の上の話です。

3. 日次ドローダウンは「1日に何回打つか」で発動する

ここが今回いちばん面白かったところです。

1手20万円なので、日次DD5%(=100万円)は5連敗して初めて抵触します。つまり1日4回以下しか打たないなら、日次DDは存在しないのと同じ。

Phase1ルール1回/日3回/日5回/日10回/日20回/日
Fintokei ProTrader 目標8%/DD10%/日次5%43.2%43.2%34.9%30.0%24.7%
FTMO 2ステップ 目標10%/DD10%/日次5%36.7%36.7%27.5%22.3%17.4%
The5ers 1ステップ 目標10%/DD6%/日次3%28.1%8.6%8.1%9.4%11.2%

日次3%の1ステップ系が圧倒的に凶悪です。3連敗で即死なので、1日3回打った瞬間に28.1% → 8.6%へ落ちます。日次5%の2ステップは5連敗を要求するぶん、はるかに緩い。

同じ「日次ドローダウン」でも、5%と3%の間には桁が違う難易度差があります。ロット20万円・1日3回という、誰でもやりそうな運用がちょうど地雷を踏む設計になっている点は指摘しておく価値があります。

なお1日20回まで増やすと1ステップ系がむしろ改善する(8.1% → 11.2%)のは、日次の壁に当たる確率が上がる一方で、1日のうちに大きく上へ抜けるチャンスも増えるためです。

4. 全ファームのPhase1をコイントスで解いた

当サイトのプランデータベースにある全ルールセットを厳密に解いた結果です。手数料5%、1手は資金の1%。

Phase1ルール手数料01回/日5回/日10回/日該当ファーム
目標2% / DD6% / 日次3%75.0%65.6%42.6%33.8%Fintokei(3ステップ)
目標8% / DD10% / 日次5%55.6%43.2%34.9%30.0%Fintokei・Funded7・FundingPips・FundedHive
目標8% / DD10% / 日次4%55.6%43.2%27.6%20.7%ATFunded・Blueberry・FundedElite
目標7% / DD8% / 日次4%53.3%42.9%31.2%24.1%ThinkCapital(3ステップ)
目標6% / DD6% / 日次なし50.0%41.6%41.6%41.6%FundedHive(Instant)
目標10% / DD10% / 日次5%50.0%36.7%27.5%22.3%FTMO・AlphaCapital・Blueberry
目標8% / DD8% / 日次4%50.0%39.2%26.9%20.7%AlphaCapital・ThinkCapital
目標6% / DD5% / 日次なし45.5%38.0%38.0%38.0%ATFunded・The5ers(3ステップ)
目標10% / DD8% / 日次4%44.4%32.9%19.9%14.7%Funded7・TradingCult
目標12% / DD9% / 日次3%42.9%29.8%5.0%6.0%PipFarm(1ステップ)
目標6% / DD4% / 日次なし40.0%33.6%33.6%33.6%ATFunded・E8 Markets
目標10% / DD6% / 日次3%37.5%28.1%8.1%9.4%The5ers・FundingPips・ThinkCapital
目標6% / DD3% / 日次なし33.3%28.1%28.1%28.1%ATFunded・E8 Markets

いちばん簡単なのはFintokeiの入門プラン(Phase1の目標がわずか2%)で、コイントスでも65.6%。いちばん難しいのはPipFarmの1ステップ(目標12% / DD9% / 日次3%)で、1日5回打つと5.0%まで落ちます。13倍の開きがあります。

「1ステップは簡単」という一般認識は、少なくとも確率の観点では逆です。1ステップ系は目標が高く(10〜12%)DDが狭い(6〜9%)ので、壁の非対称性が最初から不利側に振れています。

5. 一貫性ルールを足すとどうなるか

前々回・前回で扱った一貫性ルール(最大利益日の利益 ÷ プラスの日の合計)を、コイントスにも課してみました。

1日の回数一貫性なし50%33%25%20%
1回/日43.2%43.1%43.0%43.2%43.1%
3回/日41.5%41.5%41.3%40.5%40.1%
5回/日32.0%31.7%30.1%27.2%24.3%
10回/日25.4%22.4%15.8%10.7%6.7%
20回/日18.4%12.5%5.2%1.9%0.7%

1日1回のコイントスは一貫性ルールに完全免疫です(43.2% → 43.1%)。決着まで平均92日かかるので、利益が92日にばらけて最大日の比率が最初から2%程度しかない。閾値20%など掠りもしません。

逆に1日20回打つと20%閾値で0.7%。ほぼ通りません。

これは前回ナンピンで見つけた構造とまったく同じです。一貫性ルールが罰しているのは「手法」ではなく「利益が時間的に集中していること」。コイントスという何の意図もない売買ですら、頻度を上げただけで一貫性ルールに殺されます。逆に言えば、取引を日数方向に薄く伸ばすだけで一貫性ルールは無力化できる、という前回の結論がここでも再現されました。

6. で、これは何を意味するのか

海外の一次データによると、実際のプロップの合格率は**5〜14%**です。

一方コイントスは、手数料5%込み・日次DDあり・1日10回打っても30.0%。1日1〜4回なら43.2%。

平均的なプロップトレーダーは、コイントスに負けている。

しかも大差で。感応度の表を見ると、実測の10%前後という合格率は、コイントスが手数料20%を払っている状態(11.9%)に相当します。つまり平均的なトレーダーの意思決定は、ランダムに賭けたうえで賭け金の20%を溝に捨てるのと同じ結果を生んでいる、ということになります。

原因はおそらく2つです。

  1. ロットが大きすぎる。本記事は1手を資金の1%に固定しています。これを5%にすると壁までの手数が5分の1になり、日次DDに一撃で到達する確率が跳ね上がります。
  2. 日次DDの設計を読んでいない。上で見たとおり、日次3%と5%では難易度が桁で違います。にもかかわらず「1日何回打つか」を決めずにチャレンジを買う人が大半です。

そして前回までの実EA検証では、**ドローダウンを20〜30%帯に置いたトレンドフォローが65〜70%**という数字を出しています(検証記事)。コイントスの43.2%を明確に上回る。エッジは確かに存在するが、平均的な人はそこに到達する前にコイン以下で脱落している、というのが今回の全体像です。

検証方法について

本記事の数値はモンテカルロではありません。プロップのチャレンジを吸収マルコフ連鎖として定式化し、到達可能な状態だけを幅優先で展開したうえで、線形方程式 (I−A)f = c を解いて求めた**確率そのもの(厳密解)**です。

妥当性は次の2段階で確認しました。

  1. 閉じた式との一致:手数料ゼロ・日次DDなしの条件で、解析解 DD ÷ (目標+DD) と 1e-16の精度で一致(浮動小数点の丸め誤差レベル)。
  2. 独立なモンテカルロとの一致:40万パスのシミュレーションと突き合わせ、最大0.11ポイント差(サンプリング誤差の範囲内)。

一貫性ルールの表だけは、日次の利益履歴を状態に持つと状態空間が爆発するためモンテカルロ20万回で算出しています。こちらは通過判定を「日終わり」で行うため、同じ条件でも厳密解の表よりわずかに保守的な数字になります(1日1回のケースで両者が43.2%で一致することが、その換算の妥当性を担保しています)。

よくある質問

Q. ロットを変えたら確率は変わりますか?

手数料がゼロなら変わりません。 公平なコインの場合、賭け金を半分にすると壁までの手数が倍になるだけで、突破率は同じです。ただし手数料があると話が変わります。賭け金を小さくするほど手数が増え、支払う手数料の総額が膨らむので不利になります。逆に大きくしすぎると日次DDに一撃で殺されます。最適点は「日次DDに単発で触れない最大サイズ」の少し下です。

Q. なぜ1ステップのほうが難しいのですか?

利益目標が高く(10〜12%)、最大DDが狭い(6〜9%)ためです。壁の非対称性が最初から不利側に振れています。1ステップが「簡単」と言われるのはフェーズが1回で済むからであって、1回あたりの難易度は2ステップより高いのが普通です。2ステップ全体を通す確率と比べたい場合は、Phase1とPhase2の確率を掛け算する必要があります。

Q. トレーリングDDだとどうなりますか?

本記事は初期残高基準の固定DDで計算しています。トレーリングDD(利益に追従して下の壁も上がる)の場合、上に進むほど下の壁が近づくので確率は明確に悪化します。詳しくはドローダウン完全解説をどうぞ。

Q. コイントスで受験すれば得なのですか?

推奨しません。 ただし「損だから」ではありません。受験料と最大DDの関係を厳密に計算すると、静的DDのファームに限れば期待値の構造自体はプラスになりえます(続編で検証)。それでも推奨しないのは、①分散が極端に大きく期待値が実現するまでに何十本も必要、②ランダムエントリーが「実態のある取引」と見なされる保証がなく出金拒否のリスクがある、③配分上限で試行回数を稼げない、の3点です。

本記事の意図は「コイントスを推奨する」ことではなく、そのコイントスにすら負けている売買をしていないかを測る物差しを提供することにあります。自分の直近100トレードの成績が、ここに並んだ数字を超えているか確認してみてください。

参照ソース

※ 各社のルールは頻繁に改定されます。購入前に必ず公式サイトの最新版をご確認ください。

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この記事を書いた人

ホソノP |プロップファーム攻略の人

自分のお金でチャレンジを買い、出金まで記録して検証しています。記録した出金は Fintokei・Fundora・Funded7 で合計 610万円、The5ers で $4,776(2026年9月時点)。半裁量EA「ELDRA」の作者。

プロフィールと出金実績X @hosono_p

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