プロップ口座の設定はいつ変えるのか|評価中は触らない、ファンド到達で必ず変える
※ 本記事は2026年9月18日時点の各社公式ルールにもとづく整理です。投資助言ではありません。ルールは頻繁に更新されるため、購入前に必ず各社公式サイトでご確認ください。
チャレンジ中に口座が沈んでくると、必ず同じ誘惑が来ます。
「ロットを上げて一気に取り返そうか」「この時間帯、最近よくないから変えようか」「この手法、やっぱりダメなんじゃないか」
結論から言うと、評価フェーズの途中でその判断をする根拠は、統計的に存在しません。 そのかわり、ファンド口座に到達した瞬間には、必ず設定を変えなければいけません。 変えないとルール違反になる会社があります。
多くの人が、この2つを逆にやっています。
結論:固定するものと、変えるもの
固定(口座が死ぬまで)… 曜日 / 時間帯 / 売り買いの方向 / エントリーとエグジットの条件可変(フェーズの境目だけ)… ロット / 損切り幅 / ニュースフィルタこの線引きがすべてです。以下、なぜそうなるのかを順に説明します。
なぜ評価中は触ってはいけないのか
「負けているから変える」ができない理由
手法Aと手法Bがあって、Aの合格率が40%、Bが25%だったとします。Aのほうが明らかに良い手法です。
では、その差を実際のチャレンジ結果から見抜くには、何口座必要でしょうか。
| 比べる合格率 | 片方につき必要な口座数 | 2つ合わせて |
|---|---|---|
| 40% 対 25% | 150口座 | 300口座 |
| 50% 対 25% | 55口座 | 110口座 |
| 50% 対 20% | 36口座 | 72口座 |
| 75% 対 25% | 12口座 | 24口座 |
※ 統計の標準的な基準(有意水準5%・検出力80%)で計算した値です。
150口座です。 あなたが持っているのは、たぶん1つか2つでしょう。
これはコイン投げと同じ話です。少し歪んだコインと普通のコインを、3回ずつ投げて見分けられるかというと、無理です。3回とも表が出ることは普通のコインでも8回に1回起きます。チャレンジの合否も、これと同じくらい粗い情報しかありません。
つまり「爆破したから、この手法は悪い」も「通ったから、この手法は良い」も、ほぼ運の話をしています。 そこを根拠に設定を変えると、ノイズを追いかけるだけになります。
口座を増やしても、検証は速くならない
ここが直感に反するところです。「じゃあ10口座に増やせば早く分かるのでは」と思いますよね。
なりません。 同じ手法を10口座で回しても、同じ日のトレードは同じ1回だからです。10口座で同時に買って同時に決済するなら、それは10個のデータではなく1個のデータが10回コピーされているだけです。
判断材料になるのは口座の数ではなく、シグナルの数です。
| 手法の実力 | エッジが本物だと言うのに必要なシグナル数 | 週5回なら |
|---|---|---|
| PF 1.30 相当 | 224回 | 10.3か月 |
| PF 1.47 相当 | 105回 | 4.8か月 |
| PF 1.59 相当 | 72回 | 3.3か月 |
手法そのものの見直しは、どう頑張っても年1回が下限ということになります。数か月で判断しようとすると、必ず早すぎます。
規約のほうでも禁止されていることがある
統計の話を抜きにしても、途中の変更にはルール上のリスクがあります。
- FundedNext と TradingCult は、チャレンジとファンド口座を通じて同じ戦略の維持を明文で要求しています。とくに「評価はEAで通して、ファンドでは手動に切り替える(またはその逆)」は名指しで禁止です
- Breakout Prop は禁止事項に「評価通過後の戦略変更」を列挙しています
- Alpha Capital は、極端なスキャルピングや過大ロットを裁量で判断し、Focused Trader Group という制限枠に落とせます。ここに入るとレバレッジ1:30・1ポジション1%上限・EA全停止になります
沈んだ口座でロットを上げる行為は、この手の裁量条項にもっとも引っかかりやすい動きです。
ファンド到達の瞬間、ルールのほうが変わる
一方で、フェーズの境目は話がまったく違います。 ここでは評価中に存在しなかったルールが一斉に発動します。
| ファーム | ファンド口座で初めて効くルール | 必要な対応 |
|---|---|---|
| Hola Prime | 1トレードアイデア2% +損切り必須。含み損が初期残高の2%を超えた時点で口座終了 | ロットを半分・損切りを浅く |
| Hantec Trader | 指標の前後3分が禁止。決済も違反。含み損の合計が初期残高の3%に達すると即失格 | ニュースフィルタをON・同時保有のリスクを3%未満に |
| Moneta Funded | 同一銘柄の含み損3%(4%/8%構成は2%)で全決済+当日取引停止 | 1トレードのリスクを1.5%へ |
| Funding Pips | Striking System(含み損1.2%ごとに警告・4回で口座閉鎖) | ロットを見直す |
| Alpha Capital | Max Risk Rule(銘柄ごとの含み損が2〜3%で警告なく閉鎖) | 2026年7月21日以降に買った口座のみ |
| E8 Pro | 初回出金を請求した時点で、静的ドローダウンが初期残高へ恒久移動 | 実質トレーリングとして扱う |
| Hantec Enhanced・Express | 初回出金で最大損失のラインが初期残高に固定(EnhancedX・Endurance は出金しても動かない) | 出金した額だけ余裕が減る前提で出金額を決める |
Hantec が分かりやすい例です。評価中は指標を気にせず組めた手法が、ファンドになった瞬間に成立しなくなります。 しかも決済も違反なので、指標をまたいでポジションを持つ設計だと、そのまま抵触します。
「初志貫徹だから何も変えない」は、ここでは違反への直行便になります。
「戦略変更」と「ロット調整」は別物
ここで矛盾に見える問題が出てきます。
- FundedNext は「同じ戦略を維持しろ」と言う
- Hola Prime は「ファンドではリスクを2%以下に絞れ」と言う
どちらに従えばいいのか。答えは両方に従えるで、理由は変えるものが違うからです。
戦略とは … いつ・どちらに・どういう条件で入って、どう出るかリスクとは … その手法を、どれくらいの大きさで実行するかロットを半分にするのは戦略変更ではありません。 同じ手法を、狭くなった器に合わせて縮めているだけです。エントリーもエグジットも1ミリも変わっていません。
本物の戦略変更とは「評価はEA、ファンドは手動」「評価はスキャル、ファンドはスイング」のような、中身そのものの入れ替えです。こちらは明確に禁止されています。
ドローダウンが進んだ口座は、もう別の商品
もう1つ、見落とされやすい話をします。
沈んだ口座は、買ったときと同じ口座ではありません。 数字の上では、まったく別のプランに化けています。
「目標 ÷ 残っている枠」で見る
プロップ口座の難しさは、この1つの比率でだいたい決まります。
目標 ÷ 残っている枠 = あと何%勝たなければいけないか ÷ あと何%までなら負けられるかこの値が小さいほど簡単で、大きいほど難しい。2,000万円の口座(目標8%・最大ドローダウン10%)で計算すると、こうなります。
| 現在地 | 目標÷残枠 | 意味 |
|---|---|---|
| 新品(0円) | 0.80 | 160万勝てばいい/200万まで負けられる |
| −50万 | 1.40 | 210万勝たないといけない/150万しか負けられない |
| −100万 | 2.60 | 260万勝たないといけない/100万しか負けられない |
| −150万 | 6.20 | 310万必要/50万で終わり |
−100万の口座は「2.60」です。 新品の 0.80 に対して3倍以上重い。これは業界でもっとも厳しい部類のプラン(Breakout Turbo の 3.00)とほぼ同じ難易度です。
同じ商品を買ったはずなのに、中身が別物になっています。
実際どれくらい価値が落ちるか
モンテカルロ4万本で、現在地ごとの期待値を測りました。
| 現在地 | フェーズ1突破 | ファンド到達 | 期待受取 | 新品を1.00としたときの価値 |
|---|---|---|---|---|
| 新品(0円) | 78.2% | 43.6% | 582万円 | 1.00 |
| −50万 | 68.7% | 38.3% | 506万円 | 0.87 |
| −100万 | 54.9% | 30.6% | 400万円 | 0.69 |
| −150万 | 38.5% | 21.2% | 275万円 | 0.47 |
※ PF1.30相当(勝率52%・リスクリワード1.2)の場合。実力がゼロなら −100万 で 0.58、かなり強い手法でも 0.76。
ドローダウンが最大枠の半分まで来たら、その口座は新品の7割の器だと思ってください。
だから「回復を狙う」は割に合わない
ここが一番大事なところです。
傷んだ口座で100万円取り戻しても、手に入るのは「建値に戻った口座」だけです。目標には1ミリも近づいていません。そしてその「建値に戻った口座」は、新品を買えば参加費11万円で手に入ります。
一方、新品の口座で100万円稼げば、160万円の目標の62.5%が終わっています。
同じ100万円なのに、価値がまるで違います。数字にするとこうです。
| 手法の実力 | 新品と −100万 の期待受取の差 | 参加費 | 買い直しの倍率 |
|---|---|---|---|
| エッジゼロ | 19.3万円 | 11万円 | 1.76倍 |
| PF1.30相当 | 182万円 | 11万円 | 16.6倍 |
| PF1.59相当 | 374万円 | 11万円 | 34.1倍 |
実力がゼロでも買い直しが勝ちます。 11万円払って182万円ぶんの器が戻ってくるなら、迷う場面ではありません。
ただし「捨てて買う」ではなく「放置して買い足す」
誤解しないでほしいのは、沈んだ口座をわざわざ潰す必要はないということです。
その口座もまだ400万円の期待値を持っていますし、持っているだけならコストはゼロです。潰す理由はありません。
- 買い足せる状況なら、すぐ買い足す(比較するまでもなく得)
- 沈んだ口座はそのまま走らせる(勝手に死ぬか、勝手に通る)
- ロットは絶対に上げない(回復しても新品に戻るだけなのに、死ぬ確率だけ上がる)
本当に悩む必要があるのは、同時に持てる口座数に上限があるときだけです。たとえば口座をまたいで警告が累積する会社では、沈んだ口座が枠を1つ占有しています。そのときだけ、上の表を見て判断してください。
見直しのトリガーは3つだけ
ここまでをまとめると、見直しの仕組みはこうなります。
| 頻度 | きっかけ | やること |
|---|---|---|
| 即時 | ファームがルールを変えた・EAが禁止された・出金でトラブルが出た | その会社の買い足しを止めるだけ。走っている口座は放置 |
| 買い足すたび(5分) | 口座が死んだ・セールが来た | 次の1つをどの手法に割り当てるか決める。既存には触らない |
| 年1回 | カレンダー | 手法の実績をバックテストと突き合わせる。手法の入れ替えはここだけ |
そして重要なのは、「入れ替え」という作業が存在しないことです。
口座は放っておいても勝手に死にます。だから「どれを切るか」を決める必要がありません。次に買うものの割り当てを変えるだけで、ポートフォリオは自然に入れ替わっていきます。 損切りの決断も、撤退の決断も要りません。
まとめ
口座の一生は、こうなります。
購入 → 手法を決める ↓フェーズ1 ─┐ │ ここは一切触らない(判断材料が存在しない)フェーズ2 ─┘ ↓★ロット半減・フィルタON(ルールのほうが変わるので必須) ↓ファンド → 最低出金額に届いたら出金- 評価中に触っていいのは、外から理由が来たときだけ。 規約変更、EAの不具合、銘柄の異常。「調子が悪い」は理由になりません
- フェーズの境目では必ず変える。 変えないほうが違反リスクです
- 変えるのはロットと損切り幅とフィルタだけ。 手法の中身は最後まで固定
- 沈んだ口座は新品の7割の器。 回復を狙わず、買い足しを優先する
スクリプトは配布しています。sim-damaged-account-value.py をダウンロード(Python + NumPy、乱数シード固定)。ACCOUNT TARGET_P1 MAX_DD RISK を書き換えれば、自分の使っているプランと手法で同じ表が出ます。
FAQ
Q. チャレンジ中に手法を変えるのは、ルール違反になりますか?
会社によります。 FundedNext と TradingCult は「チャレンジとファンド口座を通じて同じ戦略の維持」を明文で要求しており、とくにEAで通してから手動に切り替える(またはその逆)は名指しで禁止です。Breakout Prop も禁止事項に「評価通過後の戦略変更」を挙げています。明文の規定がない会社でも、Alpha Capital の Focused Trader Group のように裁量で制限枠に落とせる条項を持っているところがあるので、安全側に倒すのが無難です。
Q. ロットを変えるのも「戦略変更」になりますか?
なりません。 戦略とは「いつ・どちらに・どういう条件で入って、どう出るか」で、ロットは「それをどれくらいの大きさで実行するか」です。エントリーとエグジットの条件が変わっていなければ、同じ戦略を小さく実行しているだけです。実際、ファンド口座では会社側がリスク上限を下げてくるので、ロットを下げないほうがルール違反になります。
Q. 負けが込んできたら、手法を変えるべきでは?
判断できるだけのデータが集まりません。 合格率40%の手法と25%の手法を実際の結果から見分けるには、片方につき150口座必要です。1〜2口座の結果から「この手法は悪い」と言うのは、コインを3回投げて歪みを判定するのと同じです。手法の良し悪しは口座の合否ではなく、トレード単位の実績で、年単位の期間をかけて見てください。
Q. 口座を増やせば、手法の検証は早く終わりますか?
終わりません。 同じ手法を10口座で同時に回しても、同じ日のトレードは同じ1回です。10個のデータではなく、1個のデータが10回コピーされているだけになります。判断材料はシグナルの数で決まるので、口座を増やしても検証速度は1ミリも上がりません。PF1.30相当の手法なら、エッジが本物だと言えるまでに224シグナル(週5回で約10か月)かかります。
Q. ドローダウンが進んだ口座は、諦めたほうがいいですか?
諦める必要はありませんが、期待しないでください。 最大ドローダウンの半分まで沈んだ口座は、新品の約7割の価値しかありません(実力によって0.58〜0.76)。持っているだけならコストはゼロなので、そのまま走らせて構いません。ただしロットを上げて取り返そうとするのは最悪手です。回復しても手に入るのは「新品と同じ器」だけで、それは参加費を払えば買えるものだからです。
Q. 沈んだ口座を放置して、新しく買い直すのは無駄遣いでは?
逆です。 新品と −100万 の口座では期待受取に182万円の差があり(PF1.30相当)、参加費は11万円です。16.6倍のリターンになります。実力がゼロの前提で計算しても1.76倍で、やはり買い直しが勝ちます。ただし沈んだ口座を潰す必要はありません。持ち続けるコストはゼロなので、放置したまま買い足すのが最適です。
Q. 見直しはどれくらいの頻度でやればいいですか?
カレンダーとイベントで駆動してください。 口座の成否をきっかけにしてはいけません。具体的には、(1) ファームのルール変更や出金トラブルが起きたら即時(その会社の買い足しを止めるだけ)、(2) 買い足すたびに5分だけ次の割り当てを考える、(3) 年1回だけ手法の実績をバックテストと突き合わせる、の3つです。手法の入れ替えが起きるのは3番だけです。
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この記事を書いた人
ホソノP |プロップファーム攻略の人
自分のお金でチャレンジを買い、出金まで記録して検証しています。記録した出金は Fintokei・Fundora・Funded7 で合計 610万円、The5ers で $4,776(2026年9月時点)。半裁量EA「ELDRA」の作者。