🧪 検証

適当なテクニカルを1・3・5・15口座に分けると収支はどう変わるか|分散だけの効果を5.7年の実データで測る

公開日: 2026/9/19更新日: 2026/9/19

※ 本記事は実データのバックテストです。将来の成績を保証するものではなく、投資助言でもありません。前提と限界は末尾に明記しています。

「1口座だと運で飛ぶから、口座を分けておけば収支は落ち着くのでは」。プロップファームを複数持つ人の多くが、この発想で口座を増やします。

この記事で測りたいのは 分散そのものの効果 です。手法は変えない。サイジングも変えない。変えるのは口座の分け方だけ。 同じシグナルを1口座に全部流したときと、3口座・5口座・15口座に分けたときで、年ごとの収支がどう変わるかを見ます。

手法は、成績で選ばない教科書どおりのテクニカルです。優位はありません。「優位のない人が分散だけで黒字になるのか」が問いです。

答えを先に書きます。

  • 手法そのものは負けている。 勝率47.8%・1トレードの期待値 −0.045R。コスト分だけ確実に負ける「優位なし」
  • 1口座だと赤字の年が出る。 6年のうち1年が赤字、年あたり +96万円
  • 5口座以上に分けると赤字の年が消える。 5口座で0/6、15口座で0/6。15口座の年あたりは +395万円
  • 個別の口座は半分の年が赤字。 15口座×6年=90口座年のうち50が赤字。それを束ねると6年すべて黒字になる

分散は利益を作りません。悪い年を消します。 それがこの検証で見えたことです。

前提(固定して動かさない)

まず器の設計を決めて、以降は一切いじりません。1口座は1日1回しか建てない、これが出発点です。

建て方1口座につき1日1回。 その日の最初のシグナルで建て、以降は見送り
リスク損切りまでの距離が口座の2% になるようロットを決める
損切り・利確SL 2ATR / TP 2ATR(RR 1:1)。48時間で時間切れ
手法移動平均20/50クロス / ボリンジャー50期間±2σ逆張り / 20本高値安値ブレイク
方向買いも売りも撃つ(クロスは上下、バンドは上下限、ブレイクは高値安値)
銘柄ドル円・金・US30・BTCUSD の4つ。どの口座も同じ4銘柄
コストMT5のスプレッド実測値。買いはAskで建ててBidで決済、売りはBidで建ててAskで買い戻す
口座$100,000・2ステップ(目標8%→5%)・最大DD10%静的・日次DD5%・分配80%
出金+4%で申請、14日サイクル。参加費1枚74,000円、爆破したら7日後に買い直し
期間2021年1月〜2026年9月(5.7年)。1時間足でシグナル、5分足で損切り・利確の到達を判定

「1日1回・2%」は、2%の玉が1日1つなら日次5%に届かない、というプロップ向けの基本設計です。これを前提に置く理由はFAQに書きました。

そのうえで、分け方だけを4通りにします。

分け方口座数1口座の中身
1口座13手法×5曜日のシグナルを全部1つに流す
3口座(手法別)3手法ごとに1口座。曜日は問わない
5口座(曜日別)5建てた日の曜日ごとに1口座。手法は問わない
15口座(手法×曜日)15手法×曜日で1口座

どの分け方でも、流れてくるシグナルは同じです。違うのは「その日の1回」を何個の口座が持っているかだけ。

まず、手法そのものは負けている

器に通す前に、手法だけの期待値を測りました。4銘柄・両方向・34,518トレードです。

銘柄件数勝率期待値(R)
ドル円8,44548.7%−0.027
金8,27448.7%−0.024
US307,53147.3%−0.056
BTCUSD10,26846.6%−0.069
合計34,51847.8%−0.045

RR 1:1で勝率47.8%。コインの表裏からスプレッド分だけ負ける、これが「適当なテクニカル」の正体です。ここに優位はありません。

つまり以下はすべて、負けている手法を、分け方だけ変えて器に通したらどうなるか の話です。

分け方だけ変える

1口座・3口座・5口座・15口座の受取・参加費・差引と、最悪の年・最良の年
分け方口座取引爆破受取参加費差引年あたり1口座あたり/年赤字の年
1口座11,34630770万−222万+548万+96万96万1/6
3口座(手法別)33,742912,149万−673万+1,475万+259万86万2/6
5口座(曜日別)51,488341,438万−252万+1,187万+208万42万0/6
15口座(手法×曜日)154,1891043,019万−770万+2,249万+395万26万0/6

4通りとも5.7年の通算は黒字です。負けている手法でも黒字になるのは、プロップの構造(下振れは参加費で打ち止め、上振れは分配80%で青天井)のためで、分け方とは関係ありません。

分け方で変わるのは、赤字の年があるかどうかです。 1口座は6年のうち1年、3口座は2年が赤字。5口座と15口座はゼロ。

注意点を先に書いておくと、口座を増やすと「1日1回」の枠も増えます。15口座は合計で1日最大15回建てるので、受取も参加費も1口座の約4倍に膨らみます。1口座あたりに直すと96万円から26万円に薄まる。 差引の絶対額が伸びているのは分散の効果ではなく、枠が増えた効果です。分散の効き目を見るなら、年別を見る必要があります。

年別で見る

分け方ごとの年別収支。5口座以上では赤字の年がない
万円202120222023202420252026(9月まで)最悪の年
1口座+277+131+107+52+18−37−37
3口座(手法別)+482+256−148+537+427−78−148
5口座(曜日別)+149+210+306+94+203+224+94
15口座(手法×曜日)+151+973+181+443+368+133+133

5口座(曜日別)が一番平坦です。 最悪の年が +94万円、最良の年が +306万円で、6年の幅が3.3倍しかありません。15口座は +133万円から +973万円まで7.3倍の幅がありますが、底は5口座より高い。

3口座(手法別)は伸びる年は伸びますが、2023年は3つとも同時に赤字(移動平均 −37、ボリンジャー −44、ブレイク −67)で、束ねても −148万円です。3つしか単位がないと、全部が同時に外れる年が出ます。

1口座は年を追うごとに細っていますが、これは1本の経路の結果で、傾向として読むべきものではありません。読むべきは「1口座だと赤字の年が出る」という事実のほうです。

個別の口座は、半分の年が赤字

15口座の中身を1口座ずつ見ると、分散が何をしているかがわかります。

万円202120222023202420252026通算
移動平均・月−7+48−150−15−7+4
移動平均・火+48+192−7−15−15−15+188
移動平均・水+33+410+41+96−15+196
移動平均・木+144+185−150−7−15+292
移動平均・金0+121+41+248−15−15+380
ボリンジャー・月−7−15−7+96−22−7+37
ボリンジャー・火0−22+89+114−15−15+151
ボリンジャー・水0+41−30−70+89+92
ボリンジャー・木−7−7−7−15−7−7−52
ボリンジャー・金0−7−22−7+180+48+191
ブレイク・月−15−7−15−15−7−15−74
ブレイク・火−22+168−15−7+41+81+245
ブレイク・水0−150+41+177+41+244
ブレイク・木0+204+41−15−15−7+208
ブレイク・金−15+48+144−15−7−7+148
黒字の口座数3/159/154/155/154/154/1513/15
合計+151+973+181+443+368+133+2,249

1口座の1年は、ほとんどが「参加費ぶんの小さな赤字」か「ゼロ」です。90口座年のうち赤字が50、ゼロが11、黒字は29しかありません。 どの年も黒字の口座は3〜5口座で、2026年に至っては15口座中11口座が赤字です。

それでも合計は6年すべて黒字。少数の当たった口座の利益が、残りの口座の参加費を毎年まかなっている。 これが分散の正体で、宝くじを15枚持つのに近い構造です。1枚しか持っていなければ、当たらない年は赤字になります。

ボリンジャー・木は6年すべて赤字、ブレイク・月も同じです。負けている手法なので、当たり続けない口座は普通に出ます。それでも束ねた側は困っていません。

相関は低い。ただし「単位の数」のほうが効く

分散が効くには、口座どうしの損益がバラバラに動く必要があります。週次の損益(R)で相関を測りました。

組み合わせ平均相関
15口座の全ペア(105組)−0.02(最小 −0.49、最大 +0.19)
同じ手法・違う曜日+0.006
同じ曜日・違う手法−0.129
5口座(曜日別)どうし+0.012
3口座(手法別)どうし−0.153

曜日で分けると相関はほぼゼロ。手法で分けると逆相関です(順張りのブレイクと逆張りのボリンジャーが同じ日に反対を向く)。

ところが、相関が一番低い3口座(手法別)に赤字の年が2回あり、相関がゼロ付近の5口座(曜日別)にはありません。相関の低さより、単位の数のほうが効いています。 3つでは「全部同時に外れる」確率がまだ高く、5つ以上になると誰かが当たる年が続くようになる。

15口座の内訳:手法別・銘柄別

15口座を手法別・銘柄別に集計した差引
手法(5曜日の合計)取引爆破受取参加費差引
移動平均クロス1,280301,281万−222万+1,059万
ブレイクアウト1,484381,052万−281万+770万
ボリンジャー逆張り1,42536686万−266万+420万

もっともシグナルが少ない移動平均クロスが最も残りました。3手法のうち期待値がゼロに一番近かった(−0.026)ので、負けが浅い手法がそのまま上に来た形です。

銘柄別は4つとも黒字で、金 +2,508万、ドル円 +1,672万、BTCUSD +965万、US30 +604万。幅は4倍違います。

前半・後半で割る

15口座の前半と後半の年あたり収支
期間(15口座)爆破差引年あたり黒字口座
前半 2021-01〜2023-1146+1,313万+461万10/15
後半 2023-11〜2026-0960+602万+211万8/15

両半期とも黒字ですが、後半は半減しています。手法の期待値がマイナスなので、利益はプロップの構造から出ています。その構造は消えませんが、金額は相場次第で動く。「年395万円」は平均であって、悪い時期はその半分と見ておくべきです。

エッジが少し乗ると跳ねる。少し欠けると沈む

ここまでは「優位なし」を固定していました。最後に、器はそのままで 手法の優位だけ を動かします。負けトレードをランダムに符号反転して勝率を上げ、勝ちトレードを反転して下げる。乱数20通りの平均です。

勝率を42%から60%まで動かしたときの年あたり手取りと、15口座の最悪の年
勝率期待値15口座 年あたり最悪の年赤字の年爆破1口座 年あたり
42.0%−0.16R−90万−192万5.3/6159−34万
45.0%−0.10R+110万−92万2.1/6129+25万
47.8%(素)−0.045R+395万+133万0/6104+96万
50.0%0+714万+172万0/689+224万
52.0%+0.04R+1,053万+339万0/674+379万
55.0%+0.10R+1,734万+815万0/657+651万
58.0%+0.16R+2,558万+1,334万0/642+1,007万
60.0%+0.20R+3,164万+1,756万0/635+1,252万

上に動かすと跳ねます。 スプレッド分を消しただけの50%で1.8倍(+714万円)。52%、つまり24回に1回だけ余分に勝つと2.7倍。55%で4.4倍の +1,734万円、最悪の年でも +815万円です。下は参加費で打ち止めのまま、上だけがエッジ×枠で伸びる。爆破も104回から57回に減るので、参加費側も同時に縮みます。

下に動かすと沈みます。 素から2.8ポイント欠けて45%になると +110万円で赤字の年が2回、42%だと年 −90万円で6年のうち5年が赤字です。欠け方はささいでよく、1トレードあたり損切り幅の5%ぶん(口座の0.1%)を余計に払うだけで45%の行に落ちます。滑り、広がったスプレッド、ルール違反で1回没収、といった「ミス」はこの方向に積み上がります。5.7年で見ると、素と45%の差は1,600万円です。

もう1つ。エッジが乗るほど、分散の意味は薄れます。 60%では1口座 +1,252万円と5口座 +1,232万円がほぼ同じで、15口座が上なのは取引数が3.1倍あるからです。分散が効くのはエッジが薄い領域で、エッジがあれば枠(口座数×1日1回)の話になります。

何が言えるか

分散は利益を作らない。悪い年を消す。 4通りの分け方はどれも通算では黒字で、それは手法ではなくプロップの構造から来ています。分け方で変わったのは、赤字の年があるかどうかでした。

5口座以上で赤字の年が消えた。 個別の口座は半分の年が赤字なのに、束ねると毎年どこかが当たって参加費をまかなう。3口座だと全部同時に外れる年がまだ出る。

口座を増やせば枠も増える。 15口座は1口座の4倍の差引ですが、1口座あたりでは4分の1です。絶対額は枠の効果、平坦さが分散の効果。この2つを混ぜないでください。

一番平坦なのは5口座(曜日別)で、一番稼ぐのは15口座(手法×曜日)でした。どちらを取るかは、参加費をいくら回転させられるかで決まります。

そして、エッジの数ポイントが桁を動かす。 同じ器で勝率が55%なら年1,734万円、45%なら110万円で赤字の年が出る。分散は器の底を固めるだけで、跳ねるかどうかはエッジと枠が決めます。逆に言うと、滑りや余計なコストで数ポイント欠けるだけで、長期では1,000万円単位の差になります。

FAQ

Q. なぜ「1日1回」を前提にしているのですか?

2%の玉が1日1つなら、日次5%には物理的に届かないからです。これを外すと器の話ではなく日次DDの話になります。参考までに1口座で1日何回でも建てる設定にすると、同時1建玉で年 −71万円(爆破102回、うち日次DD76回)、同時3建玉で年 −245万円(爆破196回、うち日次DD178回)でした。日次DDに届かないサイジングは、分散を測る以前の前提です。

Q. 5口座と15口座、どちらがいいですか?

差引の絶対額は15口座、1口座あたりの効率と平坦さは5口座です。5口座は最悪の年 +94万円・最良の年 +306万円で6年の幅が3.3倍、15口座は +133万円〜+973万円で7.3倍。参加費を年135万円(15枚×74,000円×1.2回転)まわせるなら15口座、そこまで回さないなら5口座、という選び方になります。

Q. 3口座(手法別)は相関が一番低いのに、なぜ赤字の年が出るのですか?

単位が3つしかないからです。相関 −0.15 は低いですが、3つが同時に外れる年(2023年)はそれでも出ます。5つ以上になると「全部外れる」確率が下がって、誰かが当たる年が続くようになります。分散の効き目は相関より単位の数で決まる、というのがこの検証の副産物です。

Q. 参加費が割引になったらどうなりますか?

15口座の参加費は5.7年で770万円です。クーポンで15%引きなら116万円、20%引きなら154万円がそのまま差引に乗ります。年に直すと20〜27万円。手法の優劣より、参加費の単価のほうが差引に直結します。

Q. 手法を選べばもっと伸びますか?

伸びます。感応度の節のとおり、勝率が数ポイント上がるだけで年あたりは倍々で伸びます。ただし本記事は手法の選別を禁じました。「移動平均だけにする」と判断できるのは結果を見た後で、それは後知恵です。選ばずに回して、分けるだけで何が変わるか が本記事の問いです。

検証の前提と限界

  • モンテカルロではなく実データです。 2021年1月〜2026年9月、MT5のM5をH1に畳んだもの。シグナルはH1、損切り・利確の到達は5分足で判定(同じ足で両方に触れた場合は損切り優先の保守側)
  • 点サイズはMT5の SYMBOL_POINT を読んでいます。 価格の刻みから推定すると、BTCUSDで74倍・金で6倍ずれ、スプレッドがその倍率で過大になります。同種の検証をする人は必ず取引所の仕様値を使ってください
  • 「1日1回」は口座ごとです。 15口座は合計で1日最大15回建てるので、これは「同じ資金を分ける」分散ではなく「枠を増やす」分散です。1口座あたりの数字は本文の表に併記しました
  • 一貫性ルール、ベストデイルール、出金手数料、KYCや購入の待ち時間は未計上です。 合計104回(15口座)の買い直しを無条件に許していますが、実際のファームは同じ口座を何度も買い直す挙動を審査対象にします。これは重大な限界です
  • 参加費は1枚74,000円で固定。実際はファームとサイズで変わります
  • 口座は$100,000・2ステップ・最大DD10%静的・日次5%・分配80%の一本に揃えています。トレーリングDDのファームや、初回出金で失格ラインが上がるファーム(E8 Markets など)では結果が変わります
  • 4銘柄のうち指数とBTCはこの期間に大きく上昇しています。両方向で撃っているので買い偏重ではありませんが、ボラティリティのレジームには依存します
  • エッジの感応度は人工的な操作です。 実データの負け(勝ち)トレードをランダムに符号反転して勝率を寄せているだけで、実在する手法の分布ではありません。方向(上に凸、下に脆い)は器の構造から来るので信用できますが、行ごとの金額は目安です
  • 1口座と3口座は経路が1本(または3本)しかありません。 「1口座は赤字の年が1回」は、この5.7年でたまたまそうだったという意味で、確率ではありません。1口座あたり250〜1,350トレードで、順位は誤差の範囲で入れ替わりえます

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この記事を書いた人

ホソノP |プロップファーム攻略の人

自分のお金でチャレンジを買い、出金まで記録して検証しています。記録した出金は Fintokei・Fundora・Funded7 で合計 610万円、The5ers で $4,776(2026年9月時点)。半裁量EA「ELDRA」の作者。

プロフィールと出金実績X @hosono_p

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